自筆証書遺言の方式緩和(法改正)
自筆証書遺言
遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言があります。
自筆証書遺言は,遺言の内容全部を自署により作成する遺言です。
現行法におけるその要件は,遺言書の全文の自署,日付の明記,署名・押印です。日付は,自署で○年○月○日まで明記する必要がありますし,署名も代筆は認められず,必ず自署で行う必要があります。
また,自筆証書遺言は,遺言者が亡くなった後,保管者や発見者が家庭裁判所に申立てを行い,検認の手続を受ける必要があります。
法改正
平成30年7月,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました。
この改正では,配偶者の居住権を保護するための方策,遺産分割等に関する見直し,遺言制度に関する見直し,遺留分制度に関する見直し,相続の効力等に関する見直し,相続人以外の者の貢献を考慮するための方策について,改正が行われました。
今回は,自筆証書遺言の方式を緩和の改正点について説明します。
なお,同時に,法務局における遺言書保管等に関する法律(平成30年法律第72号)が成立しており,自筆証書遺言を法務局に預けて保管してもらう制度が2年以内に始まる予定です。
改正点
自筆証書遺言は,現行法では,全文を自署することが要件となっています。
そのため,遺産目録についてもパソコンを使用して表を作成したり,目録を作成することは認められていませんでした。
財産が複数ある場合に目録を作成するには,パソコンを使用することが便利ですし,遺産目録を作成する代わりに不動産の登記事項証明書や預貯金の通帳のコピーを添付すれば自署よりも正確に財産を特定することができます。全文を自署しなければならないことは重い負担となっていました。
改正法では,自筆証書遺言に添付する財産目録については,自署でなくてもよいものとする。ただし,財産目録の各頁に署名押印することを要するとされました。
注意点
自筆証書遺言の方式の緩和については,他の改正部分(自筆証書遺言の法務局での保管制度を含む)に先駆けて,平成31年1月13日から施行されることが決まりました。
方式が緩和されるのは平成31年1月13日以降です。本コラム掲載時点では,まだ,改正法は施行されていません。施行日より前に自筆証書遺言を作成する場合は,今までどおり全文を自署しなければが無効となりますので,ご注意ください。
本コラムは平成30年9月13日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。