数字で見る福岡エリアの債務整理(平成28年)
自己破産と個人再生
多重債務者が債務を整理する手段はいくつかあります。
裁判所を利用する代表的な手段として自己破産と個人再生があります。
自己破産は、免責になれば借金が無くなりますが、住宅所有者は原則として住宅を失います。
個人再生は、法律の力を借りて債務を減額してもらい、何年かかけて分割して支払う解決方法です。ただし、一定額の返済を継続できる収入が不可欠です。また、個人再生では住宅ローンを支払い続けることにより住宅を失わずに済む方法もあります。
ここからは平成28年(2016年)の裁判所の司法統計データをもとに、全国の地方裁判所への自己破産申し立て件数を柱に、債務整理の統計データをご紹介します。
平成28年の自己破産申し立ては、全国で「64,637人」、1日平均「177人」
平成28年の全国の地方裁判所への自己破産申し立て件数の合計は「64,637人」でした。この数は、企業をはじめとする法人を除いた人数です。
これは1日平均にすると「177人」で、毎月5千人以上の人が破産の申し立てをしていることになります。
全国の自己破産の申し立て数
平成28年 全国の地方裁判所が受けた破産事件の申し立て件数 | ||
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全地裁の新受(件数) | ||
平成28年 | 総数 | 自然人の自己破産 |
1月分 | 4,167件 | 3,770人 |
2月分 | 5,803件 | 5,200人 |
3月分 | 6,671件 | 5,977人 |
4月分 | 6,499件 | 5,819人 |
5月分 | 5,505件 | 4,934人 |
6月分 | 6,451件 | 5,817人 |
7月分 | 6,244件 | 5,605人 |
8月分 | 5,802件 | 5,230人 |
9月分 | 5,961件 | 5,335人 |
10月分 | 5,900件 | 5,330人 |
11月分 | 5,842件 | 5,277人 |
12月分 | 6,992件 | 6,343人 |
合計 | 71,837件 | 64,637人 |
※裁判所発表の司法統計データ(平成28年の各月速報値)を基に独自に集計・作表
福岡県の自己破産申し立て件数は「3,359人」。九州・沖縄地方の4割を占める
平成28年に福岡地方裁判所管内で受けた破産事件の申し立て件数は「3,359人」でした。
福岡地裁管内では、破産を申し立てる人が1日平均で「9.2人」、月平均で「279.9人」いる計算になります。
なお、九州・沖縄地方を合わせた破産事件の申し立て件数は「8,154人」でした。
福岡の破産申し立て人数は、九州・沖縄地方の「41.2%」を占めることになります。
福岡県(福岡地方裁判所)の破産申し立て数
平成28年 福岡地方裁判所管内で受けた破産事件の申し立て件数 | ||
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福岡地方裁判所管内 | ||
平成28年 | 新受件数(総数) | 自然人の自己破産 |
1月分 | 185件 | 172人 |
2月分 | 274件 | 253人 |
3月分 | 383件 | 350人 |
4月分 | 332件 | 303人 |
5月分 | 295件 | 282人 |
6月分 | 302件 | 281人 |
7月分 | 304件 | 276人 |
8月分 | 293件 | 270人 |
9月分 | 312件 | 287人 |
10月分 | 307件 | 278人 |
11月分 | 299件 | 277人 |
12月分 | 356件 | 330人 |
合計 | 3,642件 | 3,359人 |
※裁判所発表の司法統計データ(平成28年の各月速報値)を基に独自に集計・作表
九州・沖縄地方の破産申し立て数
平成28年 九州・沖縄地方(福岡高裁管内※)で受けた破産事件の申し立て件数 (※福岡・佐賀・長崎・大分・熊本・宮崎・那覇の地方裁判所管内) |
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福岡高等裁判所管内 | ||
平成28年 | 新受件数 | 自然人の自己破産 |
1月分 | 487件 | 461人 |
2月分 | 681件 | 629人 |
3月分 | 889件 | 832人 |
4月分 | 730件 | 683人 |
5月分 | 681件 | 646人 |
6月分 | 742件 | 690人 |
7月分 | 749件 | 700人 |
8月分 | 744件 | 692人 |
9月分 | 712件 | 664人 |
10月分 | 712件 | 662人 |
11月分 | 705件 | 658人 |
12月分 | 890件 | 837人 |
合計 | 8,722件 | 8,154人 |
※裁判所発表の司法統計データ(平成28年の各月速報値)を基に独自に集計・作表
5件以上の多重債務者は「9.1万人」
全国で平成28年度に5件以上の無担保無保証借入の残高がある多重債務者の人数は「9.1万人」でした。
1人当たりの残高は「213.3万円」です(平成29年7月末現在。出典:日本信用情報機構)。
借入れが4件の人数は「25.8万人」で、1人当たり残高は「145.7万円」です。
借入れが3件の人数は「14万人」で、1人当たり残高は「113.3万円」でした。
多重債務者の人数は減少傾向
借入れが5件以上の多重債務者数は、平成18年度に171万人、平成22年度に70万人、平成26年度に14万人、そして平成28年度に9万と、確実に減少傾向を見せています。
多重債務者の推移
年度(平成) | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 |
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5件以上の無担保無保証借入の残高がある人数 | 171万人 | 118万人 | 73万人 | 84万人 | 70万人 | 44万人 | 29万人 | 17万人 | 14万人 | 12万人 | 9万人 |
3件以上の無担保無保証借入残高がある人数 | 443万人 | 378万人 | 319万人 | 374万人 | 331万人 | 257万人 | 211万人 | 159万人 | 140万人 | 133万人 | 116万人 |
1人当たり残高金額 | 116.9万円 | 106.6万円 | 95.7万円 | 79.7万円 | 67.1万円 | 59万円 | 54.8万円 | 52.6万円 | 52.4万円 | 52.3万円 | 52.5万円 |
※日本信用情報機構、政府の「多重債務問題をめぐる現状について」等のデータを基に作成
全国の消費生活センターへの多重債務の相談件数も年々減少傾向にあります。平成20年度の95,165件をピークに減少し、平成26年度で30,991件、平成27年度では29,142件でした(平成28年12月消費者庁)。
多重債務が原因とみられる自殺者数
政府のレポート『多重債務者対策の10年間の取組』(金融庁、消費者庁、厚生労働省自殺対策推進室)のレポートによると、多重債務が原因とみられる自殺者数は次のとおりです。
多重債務が原因とみられる自殺者数の推移
平成 | 19年 | 20年 | 21年 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 | 26年 | 27年 |
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人数 | 1,973人 | 1,733人 | 1,630人 | 1,306人 | 998人 | 839人 | 688人 | 677人 | 667人 |
※『多重債務者対策の10年間の取組』(金融庁、消費者庁、厚生労働省)を基に作表
政府が推進した多重債務者対策の取り組みもあり、年々確実な減少傾向が見られます。
自殺者数は、男性が女性の約15倍
平成27年の年齢別の自殺者数の内訳を見ると、計667人の自殺者の内、男性が625人、女性が42人と、圧倒的に男性の自殺者が多いのが特徴です。
また、年齢別では、50代の自殺者が182人と一番多く、次に40代、30代と続きます。
年代別自殺者数の詳細は、20~29歳が61人、30~39歳が136人、40~49歳が150人、50~59歳が182人、60~69歳が110人、70~79歳が23人、80歳以上が5人となっています。
多重負債の原因
日本弁護士連合会の「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産債務者が多重債務に陥った理由は、「生活苦・低所得」が60.24%、「保証債務」が22.42%、「事業資金」が21.37%、「病気や医療費」が20.73%、「失業・転職」が19.84%、「住宅購入」が16.05%、「給料の減少」が13.47%となっています。
これらは、生活苦ともに病気の医療費がかかるなど、複数にまたがることもあると考えられます。
なお、多重債務のうち住宅購入が原因となっているのは16.05%です。データの推移を見ると、長年にわたり増加傾向を示しているのがわかります(2000年7%→2002年9.35%→2005年10.8%→2008年9.59%→2011年12.24%→16.05%)
これは、住宅購入後に失業、給料の減少、想定どおりに給料が上がらないなどの事情により年々住宅ローンを支払えない状況に陥っていることも考えられます。
大きな流れで見れば多重債務の問題は縮小化しているともいえますが、多重債務の問題に陥っている人のうち住宅ローンを抱えている人の割合は増えています。住宅を購入する場合には、購入時だけでなく購入後も慎重な家計管理が必要になるでしょう。