離婚を相談する専門家は?(弁護士と行政書士はどう違う?)
離婚は誰に依頼?
離婚の取扱いを掲げる弁護士、行政書士はたくさんいます。
世の中には、テレビ、ラジオ、インターネットなどでいろんな広告があふれています。
相談・依頼をする際に、どういうことを考えて、弁護士、行政書士、あるいは、法律事務所、行政書士事務所(法務事務所)を探しますか?
弁護士と行政書士の違いがよくわからない方、弁護士よりも行政書士の方が敷居が低い、費用も安いというようなイメージをもっている方も多いかもしれません。
今回は、弁護士と行政書士の違い、離婚事案(離婚、親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割、面会交流、婚姻費用など)の相談・依頼する際の注意点について説明します。
弁護士と行政書士はどう違う?
まず、できる仕事、できない仕事に違いがあります。
弁護士と行政書士は、法律で取扱が認められている業務が違います。
弁護士ではない人(行政書士等の士業を含む)は、原則として、「法律事務」を取り扱うことができません。行政書士を含む他の士業は、個別の法律で認められた場合に限り、一部の「法律事務」を取り扱うことが認められています(弁護士法72条参照)。
行政書士は、行政書士法で、他の法律において制限されているものを除き、官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)の作成、官公署に提出する書類の提出の手続の代理など(詳細は下記の条文をご参照ください。)を取り扱うことができます。
行政書士の主な業務は、官公署(役所)に提出する書類作成などです。
弁護士は、弁護士法で、法律事務全般(訴訟事件に関する行為、非訟事件に関する行為、審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為、その他一般の法律事務)を取り扱うことができると定められており、法律事務の取扱について、その権限に特段の制限はありません。
弁護士の主な業務は、書類作成に限らず、交渉、訴訟行為を含む法律事務全般です。
では、この取扱が認められている業務の違いは、どう影響するのでしょうか。
※なお、各士業の業務範囲に関する法律解釈には争いがある部分もあります。
【参考】
弁護士法(抜粋)
(弁護士の職務)
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
行政書士法(抜粋)
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
第一条の四 前二条の規定は、行政書士が他の行政書士又は行政書士法人(第十三条の三に規定する行政書士法人をいう。第八条第一項において同じ。)の使用人として前二条に規定する業務に従事することを妨げない。
離婚事案では何ができて、何ができない?
※○依頼できる ×依頼できない
離婚に関する法律相談
○弁護士
×行政書士
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができるため、離婚に関する法律相談を特に制限なく受けることができます*。
紛争性のある事案(離婚条件を巡って争いがあるもの、離婚の可否や条件等について交渉中のもの等)や高度な法律的判断が必要なものも含め対応することができます。
*利害相反がある事案は除きます。
(すでに夫から相談を受けている場合には、妻から相談を受けることができないなど。)
行政書士ができる「相談」には法律相談は含まれません。
行政書士は、書類の作成のために必要な範囲で相談を受けることができますが、相談できる内容は、すでに決定した合意内容を相談者の意向に沿って整理する目的で書面を作成する相談などに限定されます。
また、行政書士は、少なくとも、紛争性のある事案(離婚条件を巡って争いがあるもの、離婚の可否や条件等について交渉中のもの等)についての相談はできません。
なお、行政書士ができる相談を「法務相談」と言っていることがありますが、「法律相談」とは別のものですので、注意しましょう。
行政書士にできる相談は、当事者間で予め離婚条件等の合意ができており、それを前提に、書面でどのような文章を(どのような表現で)記載するのかなどの相談に限定されることになるでしょう。
皆様が、離婚について、行政書士への相談を検討する場合には、そもそも行政書士が業務として取り扱える内容の相談なのかを確認する必要があります。
離婚に関する交渉・代理人業務
○弁護士
×行政書士
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができるため、離婚に関する交渉・代理人業務を行うことができます。
行政書士は、取扱業務に含まれないため、依頼者の代理人として相手方配偶者(夫や妻)との交渉や夫や妻が依頼した代理人弁護士との交渉はできません。
行政書士は交渉や代理人業務はできませんので、少なくとも、夫や妻と離婚の条件(親権、養育費、面会交流の条件、財産分与、慰謝料等)が決まらない事案(紛争性のある事案)や相手方配偶者に弁護士の代理人が就いているような事案では、必然的に交渉が必要となりますので、弁護士に相談・依頼することになるでしょう。
裁判所に提出する調停申立書、訴状、答弁書、準備書面等の書面作成の相談、作成の依頼
○弁護士
×行政書士
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができるため、訴状などの裁判所に提出する書類作成の相談・依頼ができます。
行政書士は、取扱業務に含まれないため、裁判関係の書類作成の相談・依頼ができません。
弁護士と行政書士の業務範囲の違いについては、下記のHPも参考にされてください。
行政書士費用より弁護士費用が高いは本当か?
一般的に、弁護士の費用が高く、行政書士の費用が安いというイメージをもっている方も多いようです。相談者や依頼者の方からも、そのような話を聞くことが多いです。
しかし、実際は、それはイメージにすぎないというのが実情ではないでしょうか。
このコラムでもご説明しているとおり、そもそも、弁護士と行政書士とでは取り扱うことができる業務の範囲が全く違います。
できる業務が違うため、本来は、弁護士の費用と行政書士の費用は比較ができません。
弁護士費用は、平成16年までは日弁連の定める弁護士の報酬等基準規程がありましたが、現在は報酬を自由に設定できることになっていて、各弁護士の報酬の定め方はさまざまです。
弁護士費用がわかりにくいというイメージもあるかと思いますが、当事務所では、弁護士費用の目安を示していますし、相談の際にご理解いただけるように説明を行っております。
イメージに惑わされず、ご自身でしっかり確認しましょう。
「法律事務所」と「法務事務所」はどう違う?
「法律事務所」と「法務事務所」の違いについてですが、よく目をこらしてみないとどこが違うのかよくわからないかもしれません。
「法律」(ほうりつ)と「法務」(ほうむ)の違いですが、実は大きな違いがあります。
法律(ほうりつ)事務所は、弁護士の事務所の名称です。
弁護士の事務所以外の事務所は、法律事務所を名乗ることができません。
紛らわしいですが、法務(ほうむ)事務所は、行政書士や司法書士の事務所の名称として使われていることがあります。
文字の違いはわずかですが、全く別の事務所ですので、注意しましょう。
弁護士・法律事務所への相談のすすめ
今回は、弁護士と行政書士の資格の違い、取り扱うことができる業務の違い、費用の問題、事務所の名称の問題などについて説明しました。
離婚について行政書士に相談をしても、相談できる範囲が限られるため、改めて弁護士に相談・依頼をし直さないといけない場面も出てきます。何を相談・依頼したいのか、何が相談・依頼できるのかをしっかりと確認してから相談・依頼することをおすすめします。
最近の離婚事案では、単純な話は少ないですし、事案によって争点は大きく異なりますが、協議や交渉をして決めなければならないことがたくさんあることがほとんどです。
また、離婚条件を決めるにしても、権利・義務の内容の特定、期限、約束を破った場合の対応策、関連する問題の解決など、高度な法律的な判断に基づいて内容を整理し、固める必要があります。事後のトラブルを防止するためにも、弁護士によるチェックが不可欠だと考えます。
また、皆さまが、弁護士・法律事務所に対して実際と異なるイメージを抱いていることも多いですので、いずれにしても、一度、実際に相談することをおすすめします。
当事務所では、離婚に関するご相談は、HP経由の申込み特典で、初回45分無料相談を承っております。
また、一般の事務所が営業していない土曜日相談も実施しており、多くのご利用をいただいております。
相談先をお探しの方は、ご利用を検討ください。
本コラムは2021年10月4日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。