コラム 医療機関の業務妨害(クレーム)対応
医療機関の業務妨害とは
病院,医院,クリニックなどの医療機関は,患者さんやご家族とは勿論,地域住民と良好な関係を築きながら,地域の医療を担っておられることと思います。
しかし,良好な関係を築こうとしても,どうしてもうまくいかないことはあります。患者さん,家族,近隣住民,その他第三者との間にトラブルを生じたり,思いもよらない方がモンスターペイシェントや悪質なクレーマーになったり,時には業務妨害を受けることもあります。
近年は,医療機関に対する業務妨害の内容も非常に悪質なものが多く見受けられるようなっていると思います。
よくある業務妨害の類型としては以下のようなものがあります。
- 執拗なクレーム
- 面会・面談の強要
- 説明の強要
- 謝罪の強要
- 暴言,脅迫,暴行を用いるもの
- 威力・偽計を用いるもの
- 信用毀損,名誉毀損
- セクハラ
- 居座り(不退去)
- 正当な理由のない退院の拒否
- 金銭要求
- 医療費(診療費,診察費,入院費)の支払拒否
クレーム対策・対応
業務妨害は,当初はクレームから始まっていることも多いです。そのため,日々のクレーム対策の積み重ねが重要ですし,実際にクレームが発生した場合の対応も非常に重要です。
考えられる対策としては,クレーム対応マニュアルの整備などがありますが,なかなか限界もあります。
また,医療機関には応召義務,説明義務等の問題がありますので,一般の民間企業とは違った観点からの対応が必要となる場合があります。
クレームには,正当なもの不当なもの,合理的な理由のあるものとないものがあります。また,医療行為が原因となっているもの,医療行為以外が原因となっているものもあります。実際の対応ではこういった見極めをするために様々な角度からの事実確認や検討が必要となります。
例えば以下のような内容を整理する必要があります。
- クレームの原因は何か
- クレームに至る事実経過
- 相手方の要求は何か(表向き,裏側)
- クレーム対応の事実経過
- 院内での検討
- 対応方針の決定(最終ラインの決定等)
- 要求が最終ラインを超えた場合の対応をどうするか
実際の対応
実際の対応においては,キズが浅いうちの対応することが重要です。また,仮にキズが深まっていてもそれ以上深くしないことも重要です。そこで,早期の相談をお勧めしています。
正当なクレームは真摯に受け止めて対応する必要がありますが,不当要求に対しては,時に断固として対応することも必要となってきます。
個別の事案によりますが,医療機関(病院)側の弁護士の実際の対応としては以下のようなものがあります。
- 相談・アドバイス
- 通知・警告
- 代理人としての交渉
- 警察との連携
- 裁判所等の手続利用(調停・仮処分・訴訟)
保険
医療機関の業務妨害に対応する費用を補償する保険が発売されるようです。今後はこういった保険に加入して業務妨害に対して備える必要性も高まって行くのではないかと思います。
出張相談
医療機関の先生方は非常に多忙なため,出張相談のご要望もあるかと思います。当事務所では出張相談も行っています。主張相談については個別にお問い合わせください。
本コラムは平成29年11月8日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。